asobidiot

DATA-DRIVEN NOVEL RANKING

沢木 耕太郎

独自に収集した評価データで選ぶ、"本当に愛されている小説"のランキング

PROFILE

東京都大田区出身のノンフィクション作家・エッセイスト・小説家・写真家。横浜国立大学経済学部を卒業後、銀行に入行するも初出社の日に退社し、ゼミの指導教官に勧められたことをきっかけに文筆活動を始める。1970年にルポライターとしてデビューし、1979年に日本社会党委員長刺殺事件を題材にした作品「テロルの決算」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。スポーツや旅を題材にした作品を多数発表しており、アジアからヨーロッパまでを陸路でたどる旅を記した「深夜特急」シリーズは広く読まれている。取材者自身を作品に組み込む「私ノンフィクション」と呼ばれる独自の手法にも挑んでいる。講談社ノンフィクション賞や司馬遼太郎賞など多数の賞を受賞しており、写真集の出版やラジオのDJ出演など活動の幅は広い。

Wikipedia

ながら聴きでもご視聴いただけます

ランキング

1深夜特急 第1便 - 黄金宮殿

深夜特急 第1便 - 黄金宮殿

1986年刊行

11,400pt

TOTAL SCORE

26歳のある日、ひとりの若者が思い立つ。インドのデリーからロンドンまで、乗合いバスで行ってみよう、と。仕事をすべて投げ出し、ありったけの金をかき集めて旅に出た彼を待ち受けていたのは、香港という街の圧倒的な熱気だった。黄金宮殿と名付けられた奇妙な宿に放り込まれ、雑踏の光と影に引き寄せられるように、気づけば思わぬ長居をしてしまう。続いて訪れたマカオでは、大小と呼ばれるサイコロ博奕に取り憑かれ、ギャンブルの沼へとずぶずぶと沈んでいく。その心理描写の怖さに、読者まで息をのむほどだ。バンコクではなぜか街が心に響かず、鉄道でマレー半島を南下しながら、自分が何を求めているのかを静かに問い続ける。ページをめくるたびに読者もバックパックを背負い、興奮と孤独、自由と不安が混ざり合った旅の真実を追体験する。これはただの旅行記ではなく、自己の物差しを鍛え上げる旅の記録である。

楽天で見る
絶賛3,544
好評3,314
普通3,067
不評198
酷評55

TOTAL 10,178 reviews

2深夜特急 第2便 - ペルシャの風

深夜特急 第2便 - ペルシャの風

1986年刊行

9,272pt

TOTAL SCORE

風に吹かれ、水に流され、偶然に身をゆだねる旅。主人公の私はインドへとたどり着き、カルカッタの路上で物乞いに足首をつかまれ、ブッダガヤでは最下層の子供たちとの共同生活を体験する。ベナレスでは生と死のドラマが街中で日々繰り広げられ、その光景は読む者の心をざわつかせる。ある評者が言うように、この作品は旅の出来事ではなく温度で書かれており、ガイドブックには決して載らない隙間だけを拾い上げていく。インドの混沌を抜け出した先に待つのは、命がけのチキン・レースが続くクレイジー・エクスプレスだ。パキスタン、アフガニスタン、そしてシルクロードを一路西へ。カブールではヒッピー宿の客引きを体験し、テヘランでは懐かしい人との再会を果たす。東南アジアやインドの湿度と猥雑さとは打って変わり、砂漠の乾いた空気の中を進むうちに、私は前へ前へと向かうことに快感のようなものを覚え始める。旅とは計画でも勇気でもなく、気づいたら始まっていた不思議な力に動かされるものだと感じさせてくれる一冊。

楽天で見る
絶賛2,292
好評2,154
普通2,158
不評81
酷評22

TOTAL 6,707 reviews

3深夜特急 第三便 飛光よ、飛光よ

深夜特急 第三便 飛光よ、飛光よ

1992年刊行

8,759pt

TOTAL SCORE

トルコ、ギリシャ、地中海沿岸、そして南ヨーロッパへ。気がつけば旅は「壮年期」を迎えていた。 アンカラでは日本から預かった大切な荷物をトルコ人女性に届け、イスタンブールの路上では熊をけしかけられ、ギリシャの田舎町では見知らぬ男のパーティーに飛び込む。そんな一期一会の連続でありながら、以前のように心が震えなくなっていることに、主人公はひそかに気づき始める。 旅が長くなると、人は風景ではなく自分の心の動きに耳を澄ませ始める。旅にも人生と同じように、青年期があり壮年期があり老年期がある。ユーラシアの果ての岬、ポルトガルのサグレスで、主人公はついに「旅の終わりの汐どき」をつかまえる。そしてロンドンで打った電報の文面は、出発時に友人へ豪語したものとは、まるで異なるものだった。 「ひとつの旅の終わりは、新しい旅の始まりなのかもしれない。」旅とは何か、人生とは何かを静かに問いかける、長大な旅の完結編。

楽天で見る
絶賛2,132
好評1,787
普通1,986
不評105
酷評20

TOTAL 6,030 reviews

4凍

2005年刊行

5,355pt

TOTAL SCORE

世界最強のクライマーと称される山野井泰史と、その妻・妙子。功名心も金銭欲も持たず、ただ山を愛するこの夫婦が挑んだのは、ヒマラヤの秘峰ギャチュンカン北壁だった。標高7985メートル、無酸素アルパインスタイルでの単独夫婦登攀という、常人には想像すら及ばない挑戦である。頂上を極めた帰路、二人を容赦なく襲う悪天候と雪崩。氷点下40度を超える極限の環境で、ロープ一本を頼りにした宙吊りビバーク。そして視界を失い、凍傷が全身を蝕んでいく中、夫は愛する妻のために究極の決断を迫られる。読んでいるだけで呼吸が浅くなる臨場感、と評されるほどの筆力で、生死の境を描き切ったノンフィクションである。まるで憑依したように描く著者の筆力の源は、夫妻への心からの敬意なのだろう、という言葉がこの作品の核心を突いている。凍傷で多くの指を失ってもなお山へ向かう二人の姿は、狂気と純粋さの境界を問いかける。講談社ノンフィクション賞受賞作。

楽天で見る
絶賛802
好評558
普通286
不評27
酷評12

TOTAL 1,685 reviews

5テロルの決算

テロルの決算

1978年刊行

3,736pt

TOTAL SCORE

1960年10月、日比谷公会堂の演壇に立った61歳の野党政治家と、閃光のように時代を駆け抜けた17歳のテロリストが、運命的な一瞬に交錯する。庶民派として慕われた老政治家の壮絶な半生と、周囲が知らなかった深い孤独。一方、直情的で過激な右翼活動家でありながら、裏では穏やかで礼儀正しい素顔を持つ少年。対照的な二人の人物像が、研ぎ澄まされた筆致で丁寧に描き出される。読者の恐怖を掻き立て心拍数を上げていくその緊迫感は、まさに事件現場に居合わせたかのような臨場感をもたらす。著者が20代の7年間をかけて書き上げたデビュー長編であり、「声を持たぬ者の声を聴こうとする」という信念のもと、歴史の片隅に置き去りにされた人間たちの内面を掘り下げた渾身のルポルタージュである。単なる事件の記録を超え、政治と暴力、信念と孤独、そして時代に翻弄された二つの人生を問い直す、大宅壮一ノンフィクション賞受賞のノンフィクションの金字塔。

楽天で見る
絶賛422
好評286
普通186
不評21
酷評10

TOTAL 925 reviews

6旅する力

旅する力

2008年刊行

3,670pt

TOTAL SCORE

バックパッカーのバイブルとして累計500万部を超えた名作紀行文学、その誕生の舞台裏を明かした著者初の長篇エッセイ。旅とは何か、なぜ人は旅へと駆り立てられるのかという根源的な問いに、著者が初めて誠実に向き合った旅論の集大成である。幼少期のひとり旅の記憶から、駆け出しルポライター時代の修業の日々、そして26歳で香港を起点にロンドンを目指した伝説的な旅の全貌まで、これまで語られることのなかった秘話が次々と明かされていく。あるレビュアーはこう表現している。「それはむしろ、自分の生き方そのものを決定的に揺さぶるような、深い震えだった。」と。旅に教科書はなく、教科書を作るのはその人自身であるという著者の哲学は、単なる旅行記の枠をはるかに超え、人生そのものへの問いかけとなっている。自分の無力さを自覚しながらも悪戦苦闘し続ける旅人の姿が、読む者の胸に静かに、しかし確実に刺さる一冊である。

楽天で見る
絶賛389
好評437
普通319
不評38
酷評10

TOTAL 1,193 reviews

7旅のつばくろ

旅のつばくろ

2020年刊行

3,601pt

TOTAL SCORE

旅のバイブルとも呼ばれる長編作品で世界を縦横無尽に歩いた著者による、初の国内旅エッセイ。その旅の原点は、16歳の時に周遊切符を握りしめて出かけた、ひとりぼっちの東北一周にあった。夜行列車を宿に、12日間を過ごしたあの体験が、旅のスタイルだけでなく、生きていくスタイルそのものをも形作ったのかもしれないと、著者は静かに振り返る。龍飛崎、五所川原、花巻、軽井沢、兼六園。各地を歩きながら、旅先での偶然の出会いや、文豪たちの足跡、そして変わりゆくこの国のかたちと向き合う。あるレビュアーはこう表現した。「ご飯と味噌汁と焼き魚の定食みたいな旅エッセイ」と。盤石でありながら、毎回新たな発見がある。会うべくして会い、行くべくして行く。旅と人とが結ぶ縁を、淡々としかし鮮やかに綴った41篇は、読む者をも旅人に変えてしまうような、不思議な引力を持っている。

楽天で見る
絶賛383
好評323
普通173
不評18
酷評13

TOTAL 910 reviews

8天路の旅人

天路の旅人

2022年刊行

3,574pt

TOTAL SCORE

第二次大戦末期、ラマ僧に扮した一人の日本人青年が、中国大陸の奥深くへと足を踏み入れた。密偵として潜入した西川一三は、極寒の雪道、果てしないゴビ砂漠、匪賊の襲撃、そして飢えと戦いながら、八年にわたる壮絶な旅を続けた。敗戦を知ってもなお、彼は帰国を選ばなかった。ヒマラヤを幾度も越え、チベット、インド、ネパールへ。密偵という使命を失っても、未知なる土地への純粋な探究心が彼の足を前へと向かわせ続けた。まるで悟りを求める修行僧のように、旅そのものが彼の生きる意味となっていた。西川が遺した三千二百枚の生原稿と五十時間に及ぶ対話をもとに、構想から二十五年の歳月を経て完成したこのノンフィクションは、一人の稀有な旅人の軌跡を鮮烈に描き出す。読者からは、「何しろ言葉にしたいけど意を尽くせないもどかしさ」と、「何かしら自分の生き方が一歩階段を上った」幸福感を同時に覚えると語られる、旅文学の金字塔である。

楽天で見る
絶賛373
好評315
普通113
不評19
酷評12

TOTAL 832 reviews

9春に散る

春に散る

2016年刊行

3,122pt

TOTAL SCORE

かつてボクシングの頂点を夢見ながら、理不尽な判定に敗れアメリカへ渡った広岡。心臓に爆弾を抱えたまま、40年ぶりに帰国した彼は、かつて「四天王」と呼ばれた仲間たちを探し始める。しかしそこに待っていたのは、孤独と貧困の中で静かに老いていく男たちの姿だった。広岡は彼らを呼び寄せ、あの頃のように共に暮らすことを決意する。そんな彼らのもとへ、才能あふれる若きボクサー・翔吾が現れる。叶わなかった夢の続きを、おまえに託す。四人は翔吾に自らの技と魂を注ぎ込み、世界チャンピオンという夢をもう一度追いかけ始める。「俺は生きているのか、死んでいないだけなんじゃないのか」という問いが、胸に刺さる。夢を見るときに人は強くなる。蕾のまま歩みを止めれば、散らずにすむ。それでも花は咲くことを選ぶ。これは、人生の終盤に差し掛かった男たちの再生の物語であり、自らが得たものを次の世代へと手渡す、魂の継承の物語でもある。

楽天で見る
絶賛291
好評269
普通119
不評24
酷評7

TOTAL 710 reviews

10一瞬の夏

一瞬の夏

1981年刊行

2,983pt

TOTAL SCORE

元東洋ミドル級王者、カシアス内藤。かつてその強烈な一撃に誰もが夢を見たボクサーが、四年の沈黙を破りリングへの復帰を宣言する。驚いたのは、若き駆け出しルポライターだった著者自身だった。取材者という立場を超え、プロモーターとして奔走し、私財まで投じていく。老トレーナー、若きカメラマン、そして著者、それぞれが内藤の夢に自らの人生を重ねていく。しかし現実は甘くない。生活のためにトレーニングを削らざるをえないボクサー、軋み始める人間関係、幾度も訪れる絶望。読者からは、「燃え尽きたいと願い続ける人間の物語」「一瞬の夏は、永遠の夏」という声が上がるほど、男たちの情熱と葛藤が鮮烈に刻まれた作品だ。ノンフィクションでありながら私小説的な深みを持つ、私ノンフィクションという独自の手法で描かれ、第一回新田次郎文学賞を受賞した著者の代表作。果たして彼らが最後に見たものとは何か。

楽天で見る
絶賛266
好評252
普通192
不評16
酷評8

TOTAL 734 reviews

11敗れざる者たち

敗れざる者たち

1976年刊行

2,623pt

TOTAL SCORE

ボクシング、野球、マラソン、競馬。それぞれの勝負の世界で才能を輝かせながら、栄光を完全には掴みきれなかった者たちを追ったスポーツノンフィクション6篇。カシアス内藤、円谷幸吉、榎本喜八など、時代のプレッシャーと闘い燃え尽きた者たちの姿が、著者デビュー期の瑞々しい筆致で描かれる。勝者の陰に隠れた敗者たちの物語でありながら、読者が感じるのは「悲哀」だけではない。全力で勝負に挑み散った者たちの矜持と、その人生に宿る静かな輝きが、ページをめくるたびに胸に迫ってくる。勝敗の先にこそ人間の本質がある、と著者は問いかける。

楽天で見る
絶賛250
好評214
普通210
不評39
酷評14

TOTAL 727 reviews

12流星ひとつ

流星ひとつ

2013年刊行

2,491pt

TOTAL SCORE

「何もなかった、あたしの頂上には何もなかった」。28歳で芸能界を去る決意をした歌姫・藤圭子が、ホテルのバーで火酒のグラスを傾けながら語った一夜のインタビュー。この作品の最大の特徴は、地の文を一切排し、聞き手と語り手の会話だけで紡がれた異形のノンフィクションであることだ。苦しい生い立ち、栄光の頂点、そして引退の真相。「ものわかりのいい今風のいい女のフリをしていれば幸せなときが長く続くかもしれないけど、そんなわけにはいつもいかなかったんだ」という言葉が、彼女の人生を鮮やかに射抜く。かつて一度は封印されたこの原稿が持つ重みと、流星ひとつというタイトルに込められた意味は、読了後に深く胸を打つ。

楽天で見る
絶賛208
好評132
普通94
不評14
酷評7

TOTAL 455 reviews

13旅の窓

旅の窓

2013年刊行

2,462pt

TOTAL SCORE

世界各地を旅しながら著者自身が撮影した、八十一枚の写真と短編エッセイを組み合わせたフォトエッセイ集。マラケシュのホテルで見かけた待つ女、カトマンズの露店を灯す裸電球、ローマの終着駅が漂わせる旅愁。観光名所ではなく、街角の何気ない日常に静かにカメラを向けた一枚一枚に、著者ならではの研ぎ澄まされた視点が宿っている。読者からは「沢木さんはその一瞬に魂を宿す」「旅から帰ってきた気分」との声も上がる。旅を続けるうちに、窓の外の風景が、いつしか自分自身の内面を映し出す鏡へと変わってゆく。その静かな発見こそが、本作の核心といえる。

楽天で見る
絶賛213
好評183
普通135
不評27
酷評11

TOTAL 569 reviews

14キャパの十字架

キャパの十字架

2013年刊行

2,342pt

TOTAL SCORE

写真機が生まれて以来、最も有名とも称される一枚の戦場写真。スペイン内戦で撮影された「崩れ落ちる兵士」は、その圧倒的な迫真性ゆえに、長年にわたって真贋論争の的となってきた。著者はキャパへの深い共感を胸に、4度ものスペイン現地取材を重ねながら、写真の構図、カメラ、撮影場所のあらゆる要素を丹念に検証していく。その過程はまるでミステリーのように読者を引き込み、やがてキャパの恋人であった女性カメラマン、ゲルダ・タローとの隠された物語へと繋がっていく。「写真は嘘をつく」という衝撃的な命題とともに導き出された結論は、キャパが生涯背負い続けた重い十字架の意味を静かに照らし出す。

楽天で見る
絶賛167
好評195
普通133
不評18
酷評5

TOTAL 518 reviews

15一号線を北上せよ

一号線を北上せよ

2003年刊行

2,253pt

TOTAL SCORE

セスナ機の墜落事故で背中と腰を痛めた直後、それでも内なる声は命じる。「一号線を北上せよ!」と。ホーチミンからハノイまで、バスで国道一号線を走破するこの旅は、代表作・深夜特急から約20年を経た著者による、旅慣れた大人の紀行短篇集だ。観光名所には見向きもせず、その土地の空気に溶け込み、屋台のフォーをすすり、ふと訪れる奇跡のような一瞬を鮮やかに切り取る。北上すべき一号線は、どこにでもある。私にも、あなたにも。旅への衝動をそっと後押しする、著者の物事の本質を見つめる眼差しは、この作品でも健在だ。

楽天で見る
絶賛145
好評179
普通185
不評13
酷評1

TOTAL 523 reviews

16危機の宰相

危機の宰相

2006年刊行

2,036pt

TOTAL SCORE

安保闘争の嵐が過ぎ去った1960年代、日本は次なる嵐の前夜にあった。大蔵省で長年「敗者」として歩んだ三人の男たちが、その雌伏の時代を経て掲げた言葉が「所得倍増」だった。病に倒れ、戦地に送られ、組織の傍流を歩み続けた池田勇人、田村敏雄、下村治。一度は地に叩きつけられた男たちが、底抜けのオプティミズムを武器に、当時誰もが絵空事と笑ったスローガンを現実へと変えていく様は、まさにスペクタクルだ。政治と経済が激突するスリリングなドラマの中で、熱量と鋭い視座が光る一冊。

楽天で見る
絶賛139
好評108
普通109
不評10
酷評4

TOTAL 370 reviews

17無名

無名

2003年刊行

2,031pt

TOTAL SCORE

一合の酒と一冊の本があれば、それが最高の贅沢。そう語っていた父が、夏の終わりに脳の出血で倒れた。混濁してゆく意識、肺炎の併発、そして在宅看護へ。病床の父を見つめながら、息子は無数の記憶を掘り起こし、無名の人生の軌跡を辿る。世俗的な成功とは無縁だったが、家族から深く畏怖され、愛され、尊敬された父。その父が50代から詠み続けた俳句をまとめる作業は、もう一度父の人生を確かめる旅となる。「無名の人の無名の人生。だが、その無名性の中にどれほど確かなものがあったろう」。静謐な筆致で描かれた、生きて死ぬことの厳粛な営み。

楽天で見る
絶賛133
好評153
普通168
不評17
酷評5

TOTAL 476 reviews

18檀

1995年刊行

2,023pt

TOTAL SCORE

無頼派と呼ばれた作家の妻として、30年を生き抜いた女性の証言を軸に描かれた作品。愛人との暮らしをありのままに綴った夫の遺作を、17回忌を過ぎてはじめて読み通した妻は、そこに描かれた自分の姿に静かに異を唱える。著者は一年間にわたるインタビューを重ね、妻の一人称の語りとして物語を紡ぎ出すという独自の手法を用いており、読者はいつしか書き手の存在を忘れ、妻の肉声そのものに引き込まれていく。愛人問題、私小説にされた屈辱、そして母としてより妻として費やした歳月。読み進めるのが辛くなるほどの事実が積み重なる一方で、最終章に至ったとき、妻の言葉はある静かな境地へとたどり着く。「貧しかったけれど、不幸ではありませんでした。」という述懐が、長い時間をかけて熟成された愛の深さを物語る。

楽天で見る
絶賛137
好評139
普通154
不評17
酷評5

TOTAL 452 reviews

19人の砂漠

人の砂漠

1977年刊行

1,861pt

TOTAL SCORE

餓死した老女が残したミイラと奇妙なノート、元売春婦たちが暮らす養護施設、北方領土の返還を望まない漁師たち、皇室への不敬罪を犯した者たちのその後。社会の片隅で、陽の当たらない場所で生きる人々を丹念に追ったルポルタージュ全8編。著者がまだ20代だったとは思えない取材力と洞察で、新聞の片隅にしか載らないような小さな事実から、普遍的な人間の真実を掘り起こしていく。恋が切ないとか、思っているなら読んでみたらいい。事実という迫力に加え、普遍的な真実がしっかりと伝えられており、ルポルタージュという枠を軽やかに超えていく。登場する人々は社会的な敗残者と呼ばれるかもしれないが、自らに与えられた人生を必死に気高く生きている。

楽天で見る
絶賛120
好評121
普通129
不評16
酷評5

TOTAL 391 reviews

20波の音が消えるまで

波の音が消えるまで

2014年刊行

1,853pt

TOTAL SCORE

サーフィンの夢を諦め、流木のようにマカオへ辿り着いた青年・伊津航平が、カジノの王「バカラ」に魅入られていく物語。偶然の勝ちは要らない、絶対の必然を掴むんだ、という執念が彼を深みへと引き込む。バカラの魔力に取り憑かれた謎の老人・劉、心に深い傷を抱える娼婦・李蘭、それぞれが闇の淵を覗き合いながら運命を交錯させていく。雷のように交錯し、薔薇の花弁のように砕け散る三者の行方は。勝つためではなく、生を濃く生きるために全てを賭けた青年が最後の岸辺で見たものとは何か。著者初のエンターテインメント小説にして、千五百枚の超大作。

楽天で見る
絶賛120
好評154
普通109
不評24
酷評7

TOTAL 414 reviews

21彼らの流儀

彼らの流儀

1991年刊行

1,836pt

TOTAL SCORE

砂漠に降る雪、大晦日の夜に手帳を前に思い悩む女、命綱なしに東京タワーを登る男。著名人から名もなき市井の人々まで、33人の「一瞬」を鮮やかに切り取った物語集。コラムでもなく、エッセイでもなく、ノンフィクションでも小説でもない。しかし奇妙なことに、それらすべての気配を同時に漂わせる。観察者に徹することで余計な判断や共感を排し、人間ドラマをありのままに映し出す筆致は、読む者に静かな驚きをもたらす。発光体はあくまで「彼ら」であり、書き手はその光を感知するに過ぎない。懊悩もさらりと流して生きる人々への、温かなエールが滲む一冊。

楽天で見る
絶賛103
好評130
普通176
不評13
酷評2

TOTAL 424 reviews

22バーボン・ストリート

バーボン・ストリート

1984年刊行

1,679pt

TOTAL SCORE

深夜のバーの片隅で、グラスを傾けながら語り合うような雰囲気の15編のエッセイ集。スポーツ、映画、賭け事、古本、旅など、身近なテーマを糸口に話が展開していく。井上陽水から深夜に電話がかかり、宮沢賢治の詩を朗読する場面や、高倉健との粋なエピソードなど、著名人との交友が随所に散りばめられている。解説の山口瞳が「エッセイのほうが直木賞候補作より遥かに小説になっている」と唸ったように、ノンフィクションをフィクションのように、エッセイを小説のように書くその文体は唯一無二。ドライな筆致の奥に確かな湿り気が漂う、絶妙なバランス感覚こそがこの著者の真骨頂。第1回講談社エッセイ賞を受賞した、洒脱な一冊。

楽天で見る
絶賛78
好評140
普通204
不評13
酷評3

TOTAL 438 reviews

23銀河を渡る(改題: いのちの記憶、キャラヴァンは進む)

銀河を渡る(改題: いのちの記憶、キャラヴァンは進む)

2018年刊行

1,609pt

TOTAL SCORE

旅とは、もう一つの人生を生きるためのもの。盗賊にさらわれることを夢見た少年時代から始まり、シルクロードを渡り、マラケシュへの道をたどり、オリンピックの熱狂を目撃した25年間のエッセイ集。高倉健との偶然の出会いから深まった交流と永遠の別れ、山野井夫妻との邂逅が名作を生んだ瞬間など、無数の旅と人々との出会いが銀河のごとく瞬く。犬は吠える、がキャラヴァンは進む、というアラブの諺のように、好奇心を全開にして海を渡り続けた著者の軌跡は、読む者の胸に静かな旅熱を灯す。

楽天で見る
絶賛84
好評105
普通69
不評10
酷評3

TOTAL 271 reviews

24世界は「使われなかった人生」であふれてる

世界は「使われなかった人生」であふれてる

2001年刊行

1,534pt

TOTAL SCORE

「使われなかった人生」という言葉が、読む者の胸に静かに刺さる。あのとき別の選択をしていたら、という問いは誰もが抱えるものだが、著者はそれを後悔とは少し異なる概念として捉え直す。映画という他者の人生を疑似体験できる装置を通じて、人生の機微を抑制の利いた筆致で解きほぐす全三十編の映画評集。去りゆく女性を引き止められなかった男、弟子に裏切られた女性など、スクリーンに映し出される人間ドラマが、著者独自の視点で丁寧に読み解かれていく。読者からは「こんなに胸に響く映画評は初めて」「どの映画も観たくなる」という声が絶えない。映画を観ることを旅になぞらえ、スクリーンの向こうに広がる世界へと誘う一冊。

楽天で見る
絶賛101
好評83
普通139
不評23
酷評6

TOTAL 352 reviews

25暦のしずく

暦のしずく

2025年刊行

1,460pt

TOTAL SCORE

江戸時代中期、日本の芸能史においてただひとり、芸を理由に命を奪われた男がいた。その名は講釈師・馬場文耕。刀を捨てた元武士が、なぜ獄門という極刑に処されることになったのか。軍記物の講釈から始まり、やがて幕府が隠す社会の真実へと斬り込んでいく姿は、まさに「現代のジャーナリストのはしり」と読者に言わしめるほど。田沼意次や九代将軍・家重といった歴史上の人物も絡み合い、550ページを超える大作ながら、読者を一気に引き込む筆力がある。獄門という結末が冒頭で示されながらも、文耕が必然とも言える形でその運命へと向かっていく緊張感は息をのむものがあり、ラストには思わぬ驚きが待ち受けている。

楽天で見る
絶賛76
好評57
普通21
不評6
酷評2

TOTAL 162 reviews

26チェーン・スモーキング

チェーン・スモーキング

1990年刊行

1,453pt

TOTAL SCORE

古書店で手にした一冊の本の書き込み、公衆電話の向こうで演じられた人生の一幕、深夜のタクシーで交わした奇妙な会話。ひとつのエピソードが次のエピソードを引き寄せ、まるでチェーン・スモークのように連鎖しながら、ひとつの世界を形づくる15篇のエッセイ集。極上の短篇小説を思わせる、と評される所以は、冒頭に仕掛けた伏線を幾重にも捻り、読者の想像を超えたところに静かに着地する構成の妙にある。飾らぬ筆致ながら、都会に生きる同時代人への眼差しは鋭くも温かく、随所に忍ばせたユーモアが読者の笑いを誘う。ボクサー、旅人、そして市井の人々。どこか乾いたその文体は、時代を超えて心に沁みわたる。

楽天で見る
絶賛66
好評103
普通208
不評13
酷評5

TOTAL 395 reviews

27旅のつばくろ、ふたたび

旅のつばくろ、ふたたび

2022年刊行

1,427pt

TOTAL SCORE

世界中を旅してきた著者が、心の声に従い気の向くままに日本全国を巡る、国内旅エッセイの第二弾。16歳で初めて一人旅を経験した男鹿半島への追憶から、小泉八雲の面影を辿りながら歩いた松江、吉永小百合と語り合った伊豆の修善寺まで、「あの頃」と「いま」が交錯する旅が丁寧に綴られる。読むとまた旅に出たくなる本であり、「迷った時は行くに限る、全ては移動によって始まるのだ」という言葉が胸に刺さる。有名観光地よりも、偶然出逢った人や景色に心をひかれる著者独自の旅のスタイルは、代表作「深夜特急」にも通じる人生への姿勢そのものだ。旅とは心残りを次の旅へとつなぐ、果てしない連続ドラマであることを静かに教えてくれる一冊。

楽天で見る
絶賛67
好評78
普通56
不評6
酷評2

TOTAL 209 reviews

28オリンピア1936 ナチスの森で

オリンピア1936 ナチスの森で

1998年刊行

1,251pt

TOTAL SCORE

1936年、ナチスが威信を賭けて演出したベルリン大会。政治とスポーツが激しく交錯したこの異形の祭典を、著者は記録映画の傑作を生み出した天才監督レニ・リーフェンシュタールへのインタビューと、運命に翻弄された日本人選手たちの証言によって鮮烈に再構築する。三段跳び、水泳、マラソン、それぞれの種目で繰り広げられた勝者と敗者の物語。シベリア鉄道で9000キロを越えて辿り着いた選手たちの純粋なひたむきさが胸を打つ。「盛り上がりはないが、淡々と考察していく力強い筆致に最後まで目が離せなかった」との声が示す通り、平和の祭典と国家の威信が渾然一体となったオリンピックの本質を、圧倒的な臨場感で描き出す傑作ノンフィクション。

楽天で見る
絶賛54
好評64
普通76
不評4
酷評3

TOTAL 201 reviews

29ポーカー・フェース

ポーカー・フェース

2011年刊行

1,236pt

TOTAL SCORE

13篇のエッセイで構成された、語りの名手による傑作エッセイ集。靴磨きの老人と鮨屋の主人の手が呼び起こす感懐、銀座の酒場での一夜がやがてカクテルをめぐる物語へと姿を変えていく。読者が「話の展開がナックルボールのような不思議な動き方をする」と評した通り、冒頭の話題から波が移るように、小路をふっと曲がるように、思いがけない場所へと運ばれる構成が心地よい。「伏線をさりげなく回収するエッセイ、巧さが前面に出過ぎないのが真の巧さ」とも称される筆致は、押しつけがましさを一切排しながら、読後に静かな余韻を残す。高峰秀子や尾崎豊との交流を綴った章など、運命や選択、後悔を問いかける内容も散りばめられており、「嫌味のないカッコ良さで何回でも読みたい」という声が多くのファンから寄せられている。

楽天で見る
絶賛59
好評67
普通32
不評6
酷評5

TOTAL 169 reviews

30246

246

2007年刊行

1,035pt

TOTAL SCORE

後年、名作と称えられる旅行記の原稿を書き進めながら、本を読み、映画を観て、酒を酌み交わす。三十代最後の一年間を綴ったこの日記風エッセイは、普段は私生活をほとんど見せない著者が、珍しく自らの日常を開陳した記録です。昭和という時代の文化的な空気を背景に、ノンフィクション作家として何を目指すべきかを問い続ける思索の日々が、端正な文体で刻まれています。そしてその合間に光るのが、幼い娘との夜の「オハナシ」の時間。まさに「非凡なる平凡」とも呼ぶべき、ストイックでありながら温かみに満ちた日常が、昭和の文化史としても読み応え十分な一冊に結実しています。

楽天で見る
絶賛40
好評53
普通57
不評10
酷評0

TOTAL 160 reviews

31あなたがいる場所

あなたがいる場所

2011年刊行

1,024pt

TOTAL SCORE

ノンフィクションの旗手として知られる著者が初めて挑んだ短編小説集には、九つの物語が収められている。バスに乗り遅れた女子高生、迷子の少女を助けようとする少年、やり場のない怒りを抱えた父親など、どこにでもいそうな人々が主人公だ。少しずつ積み上げてきた生が、ふと直面する戸惑い、やりきれなさ、苦い思い。その儚くも愛しいミルフィーユのような断面を鮮やかに描き出す。読者からは、静かに、ソフトに、心に言葉が着地していくような、という声も寄せられている。後悔せずに生きていける人間などいない、という著者の眼差しは、それでも前を向こうとする登場人物たちをあたたかく照らし出す。人のリアルな心理描写を得意とするノンフィクション作家ならではの視点が、小説の世界でも存分に発揮された一冊。

楽天で見る
絶賛45
好評89
普通137
不評29
酷評6

TOTAL 306 reviews

32天涯

天涯

1997年刊行

996pt

TOTAL SCORE

旅をテーマに、著者が自らカメラを手に世界各地を歩き続けたフォトエッセイシリーズです。南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、そしてアマゾンの奥地まで、「通過地点」として次々と旅を重ねた記録が全六巻に収められています。写真と文章は互いを説明し合う関係にはなく、その絶妙な距離感がひとつの世界観を生み出しています。読者レビューには「すばらしいどこでもドア」という言葉もあり、ページをめくるたびに異国の空気の中に立っているような感覚に引き込まれます。「旅は永遠に癒されることのない病」という言葉が象徴するように、旅と人生を重ね合わせた静謐な問いかけが、全編を通じて静かに響き続けます。

楽天で見る
絶賛40
好評70
普通133
不評19
酷評5

TOTAL 267 reviews

33心の窓

心の窓

2024年刊行

986pt

TOTAL SCORE

旅先で切り取られた81枚の写真と、500字ほどの短いエッセイが見開きに並ぶフォトエッセイ。ブッダガヤで出会った瞳の少女、ヘルシンキで胸を熱くした幼き兄妹、夜のコルドバで心を騒がせた路地裏の哀愁。舞台はバリ島やパリ、ヴェトナムなど多彩な国々に及ぶ。著者が語るのは、「世界につまらない場所というのは存在しない」という確かな眼差し。名所や絶景よりも、旅先でふと目に留まった人々の営みや、一瞬の表情を丁寧に掬い上げる写真の数々は、見る者の心の奥にある「窓」を静かに開いてくれる。人生の機微を淡々と、しかし鮮やかに描き出す81篇の小さな物語。

楽天で見る
絶賛34
好評36
普通27
不評2
酷評0

TOTAL 99 reviews

34貧乏だけど贅沢

貧乏だけど贅沢

1999年刊行

964pt

TOTAL SCORE

旅をテーマに、井上陽水、高倉健、阿川弘之、群ようこら十人の著名人と語り尽くした対談集。いきなり空港へ向かい、その場で目的地を決めるという井上陽水の豪快な旅のスタイルや、群ようこのアメリカ初体験が下着モニターだったという意外なエピソードなど、旅人それぞれの個性がにじむ会話が続く。寡黙なイメージとは裏腹に饒舌に語る高倉健の章は特に印象深く、「こだわりを捨てると、人間というのは、急に楽になる」という言葉が読者の心に刺さる。旅の話だけにとどまらず、麻雀やバカラなど博打の話題も色濃く絡み合い、「旅における贅沢な時間とは、必ずしも金で買えない何か」という問いが、対話を通じて浮かび上がってくる。

楽天で見る
絶賛36
好評63
普通75
不評10
酷評4

TOTAL 188 reviews

35イルカと墜落

イルカと墜落

2002年刊行

933pt

TOTAL SCORE

アマゾンの奥地で文明と接触していない民族、イゾラドを追う取材旅行。幻想的なピンクのイルカが泳ぐ大河を遡る「イルカ記」と、乗り込んだセスナ機が突然墜落する「墜落記」の二部で構成されるノンフィクション作品です。奇跡的に命を落とした者も重傷者も出なかったこの事故で、著者が墜落を悟った瞬間に口をついた言葉は、なんと「マジか。」のひと言。恐怖でも嘆きでもなく、どこか他人事のような冷静さで状況を観察し続ける筆致が、読む者を不思議な感覚へと引き込みます。「死はそこにあるだけ」と表現される著者独特の死生観が、アマゾンの悠久の自然を背景に静かに浮かび上がる一冊です。

楽天で見る
絶賛38
好評51
普通66
不評7
酷評5

TOTAL 167 reviews

36キャパへの追走

キャパへの追走

2015年刊行

925pt

TOTAL SCORE

写真史上もっとも有名な作品のひとつ、崩れ落ちる兵士を撮影した伝説の戦場写真家、ロバート・キャパ。故国ハンガリーを離れ、スペイン内戦、第二次大戦のノルマンディー上陸作戦、そして最期の地インドシナまで、勇気あふれる滅びの道を歩み続けた男の足跡を、著者は実際に世界中を旅して辿り直す。キャパが残した写真の撮影場所を可能な限り探し歩き、同じ角度で現在の光景を収める、という手の込んだ企画がまず秀逸。当時と現在の二枚の写真が並ぶとき、通り過ぎ去った時間にため息が出るような感覚が生まれる。紀行、評伝、写真集が渾然一体となった、今までにない形のノンフィクション大作。

楽天で見る
絶賛30
好評49
普通37
不評3
酷評2

TOTAL 121 reviews

37作家との遭遇

作家との遭遇

2018年刊行

914pt

TOTAL SCORE

書くことが即ち生きることだった作家たち、その知られざる素顔に肉薄する作家論集。新宿や銀座の酒場で、あるいは書物の森の中で積み重ねられた、23名の作家との濃密な遭遇が綴られる。向田邦子を「記憶を読む職人」と称し、井上ひさしを「必死の詐欺師」と名付けるなど、各章の枕詞がすでに鋭利だ。一流の書き手は、一流の読み手でもある。対象の全著作を読み込んだうえで紡がれる作家論は、切れ味鋭く、それでいて深い敬意に満ちている。さらに、経済学部在籍時に書かれた卒業論文「アルベール・カミュの世界」を収録しており、著者の原点を垣間見ることができる。読み終えると、取り上げられた作家たちの作品を手に取りたくなる、いわば読書への扉となる一冊。

楽天で見る
絶賛40
好評41
普通40
不評10
酷評2

TOTAL 133 reviews

38若き実力者たち

若き実力者たち

1973年刊行

893pt

TOTAL SCORE

「自らが選んだ道をひたすら疾走する十二人の胸に秘められた情熱の旋律とロマンの軌跡」、これがデビュー作のコンセプトです。小沢征爾、山田洋次、尾崎将司など、各界でその名を轟かせた十二人の素顔に、弱冠二十五歳のルポライターが肉薄します。単なるインタビューにとどまらず、共に酒を酌み交わし、旅をともにしながら、各人の本質を鋭く描き出す手法は、当時の人物ノンフィクションに新たな地平を切り開きました。「三十までは何でもできると思っている。ところが三十過ぎると自分に可能なことが地図のようにはっきり見えてくる」という小沢征爾の言葉が示すように、若き実力者たちの内なる声が生々しく刻まれています。

楽天で見る
絶賛37
好評33
普通43
不評6
酷評2

TOTAL 121 reviews

39「愛」という言葉を口にできなかった二人のために

「愛」という言葉を口にできなかった二人のために

2007年刊行

892pt

TOTAL SCORE

「あのとき、言えていれば」。誰もが胸の奥に抱えるその思いを、映画という窓を通して丁寧に掘り起こす、珠玉の映画エッセイ集。取り上げられるのは恋人同士の愛だけではなく、親子の間に、友の間に、故郷への想いにも静かに宿る、言葉にならなかった感情たちだ。読者からは、「つやつやキラキラしてる文章」「観ていない作品なのに感動が伝わってくる」という声が寄せられる。三十二編のエッセイはいずれも、映画の核心には触れながら肝心な部分は巧みに隠し、作品を観る喜びを奪わない。映画評でも批評でもなく、映画から始まる著者独自の思索の旅。スクリーンに映し出された人生の歓喜と哀切が、端正な文章によって静かに読者の内側へと染み込んでいく。

楽天で見る
絶賛39
好評41
普通42
不評9
酷評3

TOTAL 134 reviews

40夕陽が眼にしみる、不思議の果実、勉強はそれからだ(改題: 象が空を)

夕陽が眼にしみる、不思議の果実、勉強はそれからだ(改題: 象が空を)

1993年刊行

881pt

TOTAL SCORE

「相手の言葉の湖に、水路をつなげる」。そんな独自のインタビュー哲学を持つノンフィクション作家が、約十年にわたって書き綴ったエッセイを一冊に凝縮した作品。吉永小百合や美空ひばりへの取材、ロバート・キャパの伝記翻訳を通じた考察、そして旅と書物から生まれた珠玉の文章群が並ぶ。「ただの象は空を飛ばないが、四千二百五十七頭の象は空を飛ぶかもしれない」という言葉が示すように、事実という旗門から逸脱しないことを自らに課しながら、いかに真実へと肉薄するかを問い続ける。旅、映画、スポーツ、文学、そして日常のあらゆる場面が、著者独自の視点で鮮やかに切り取られており、「文章の中で気持ちよく酔わせてくれる」と読者を唸らせる筆致は今も腐ることがない。

楽天で見る
絶賛32
好評34
普通122
不評10
酷評2

TOTAL 200 reviews

41紙のライオン、ペーパーナイフ、地図を燃やす(改題: 路上の視野)

紙のライオン、ペーパーナイフ、地図を燃やす(改題: 路上の視野)

1982年刊行

830pt

TOTAL SCORE

二十代のルポライターが、みずからの感性を頼りに異国を歩き、書くことの意味を問い続けた記録。三十を過ぎると自分に可能なことが地図のように見えてくる、という言葉を受けて、その地図をどう燃やすかという問いが全編を貫く。書評や作家論では、井上ひさしや三島由紀夫を鋭く切り取り、評価軸のぶれない独自の視線が光る。ノンフィクションをサッカーにたとえ、想像力という手を縛ることで生まれる緊張を語るくだりは、書き手としての倫理観と覚悟を端的に示す。断片の鮮烈さを重視し、事実の中に虫の歩みと鳥の視線を同時に持ち込もうとする、若き書き手の方法論が凝縮された一冊。

楽天で見る
絶賛25
好評33
普通77
不評2
酷評2

TOTAL 139 reviews

42心に残る物語 右か、左か

心に残る物語 右か、左か

2010年刊行

750pt

TOTAL SCORE

「人生の分岐点」をテーマに、13人の作家による珠玉の短編を収めたアンソロジーです。芥川龍之介、江戸川乱歩、坂口安吾といった文学史に刻まれた大御所から、向田邦子、開高健、そして小川洋子、村上春樹まで、時代を超えた豪華な顔ぶれが揃います。人は何かを選び取るとき、あるいは選ばされるとき、その根底には戸惑いや不安、恐れが潜んでいます。「プールサイド小景」のラスト一文は読む者に戦慄をもたらし、江戸川乱歩「人間椅子」はあの薄気味悪さで他の全作品を霞ませるほど強烈です。編者自身によるあとがきにも深みがあり、選択というテーマの奥深さが丁寧に語られています。

楽天で見る
絶賛22
好評32
普通25
不評4
酷評0

TOTAL 83 reviews

43途上の王国

途上の王国

2026年刊行

715pt

TOTAL SCORE

『深夜特急』の終着点であるロンドンへの再訪をきっかけに、かつての旅で果たせなかった心残りを回収すべくモロッコへ旅立つ。ジブラルタル海峡を渡り、タンジール、カサブランカ、マラケシュ、そしてサハラ砂漠へ。観光名所を巡るのではなく、街を彷徨い、屋台で現地の食事を楽しみ、見知らぬ人々との偶然の出会いを積み重ねていく。「深夜特急のような熱に浮かされた放浪記ではないが、その系譜はしっかりと感じ取れる円熟した大人の旅行記」と評されるこの作品は、旅先の景色だけでなく、現地の人々との交流を通して人間そのものを描き出す。文中に散りばめられたオールカラーのスナップショットが、まるで同行しているかのような臨場感を生み出す、スナップショット・トラヴェローグという新たな形式の紀行文学。

楽天で見る
絶賛22
好評21
普通5
不評0
酷評1

TOTAL 49 reviews

44銀の森へ

銀の森へ

2015年刊行

621pt

TOTAL SCORE

朝日新聞に15年以上にわたって連載された映画エッセイを書籍化した作品です。1999年から2007年にかけて取り上げられた90篇を収載し、邦画・洋画を問わず世界各国の多彩な映画を俎上に載せています。作品の主題や社会背景、監督の意図、役者の妙について、著者ならではの人生観と深い思索を交えた端正な文章で綴られています。成功の果てにある地獄じみた世界、奇跡のような輝き、静かな悲哀と、映画が届ける思いもかけぬ体験を鮮やかに切り取り、読めば映画が観たくなること必至です。決してネタバレせず、映画の魅力を過不足なく伝えながら、際どい綱渡りのような文章でまとめあげる筆致は圧巻です。

楽天で見る
絶賛17
好評23
普通18
不評1
酷評1

TOTAL 60 reviews

45達人、かく語りき

達人、かく語りき

2020年刊行

616pt

TOTAL SCORE

各界の達人たちと交わした対話を、インタビューでも対談でもなく「セッション」と名付けたことに、著者の美学が宿っている。文学、映画、建築、音楽、将棋と、分野を超えた十人の言葉は、どれも一度限りの即興演奏のように鮮やかだ。相手にすべてを委ねるわけでなく、しかし自分を押しつけるわけでもなく、著者は「まさに達人と達人の言葉のぶつかり合い」を丁寧に引き出していく。すでに他界した方々も多く、その肉声はもはや二度と聴けない。時代を跨いで生きた人間の言葉が持つ、独特の質感と重みがページに刻まれている。巻末に収録されたエッセイ「あう」ということが、全編を静かに貫く一本の芯となっている。

楽天で見る
絶賛20
好評16
普通12
不評1
酷評1

TOTAL 50 reviews

46銀の街から

銀の街から

2015年刊行

609pt

TOTAL SCORE

朝日新聞で15年にわたり連載された映画評エッセイの後編。2007年から2014年にかけて書かれた90篇を収録し、話題作だけでなくアジア、ヨーロッパ、南米のマイナーな作品まで幅広くとりあげる。「どこにも寄りかかっていない、自分の目だけを信じた」視点で、著者は4ページほどの文章の中に、映画の核心をすくいとるように語りかける。その端正な筆致は感情的になりすぎず、むしろ冷静な観察と深い思索が絡み合う独特のスタイルで、読者をそれぞれの作品の入口へと静かに誘う。文庫版あとがきには、映画評論家・淀川長治とのエピソードも収められており、映画への深い愛情が滲み出る一冊。

楽天で見る
絶賛17
好評13
普通3
不評0
酷評0

TOTAL 33 reviews

47青春の言葉たち

青春の言葉たち

2020年刊行

592pt

TOTAL SCORE

各界の著名人十名と交わした対談を一冊に収めた、セッションズシリーズ第二巻。映画監督、俳優、棋士、漫画家など、異なる分野で活躍する十名それぞれの青春の記憶と軌跡が、著者との対話を通じて浮かび上がる。単なるインタビューではなく、互いの言葉が触発し合う「セッション」として、既に相手の内に確固としてあるものを引き出すのではなく、相手も気づいていない心の底の鉱脈を掘り起こす。中でも、若くしてこの世を去ったあるロックスターとの対話は、その後の運命を知る読者の胸に深く刻まれる。著者自身の生い立ちや学生時代も対談の中で垣間見え、十人十色の青春像が交差する濃密な一冊。

楽天で見る
絶賛18
好評12
普通11
不評1
酷評0

TOTAL 42 reviews

48陶酔と覚醒

陶酔と覚醒

2020年刊行

570pt

TOTAL SCORE

旅と冒険とスポーツをテーマに、各界の第一人者たちと交わされた十の対話を収めた対談集。ヨットで海を渡る者、垂直の岸壁に命を懸ける者、世界を旅し続けた者たちが語る言葉は、どれも趣味の域を遥かに超え、己の五感を研ぎ澄ます極限の体験へと読者を引き込む。荒野を突き進む姿は、怖ろしくも輝かしい。一方で著者自身は徹底した「みる者」として対話に臨み、巻末エッセイではその立場への葛藤と昇華が静かに綴られる。「する者」の恍惚と「みる者」の覚醒が、一冊の中で鮮やかに交差する。

楽天で見る
絶賛20
好評8
普通7
不評2
酷評0

TOTAL 37 reviews

49カシアス

カシアス

2005年刊行

453pt

TOTAL SCORE

悲運の天才ボクサー・カシアス内藤の軌跡を追った写真文集。写真家・内藤利朗が発表の場もないまま、ただ一人の男にカメラを向け続けた記録は、圧倒的な迫力で読む者の心に迫ってくる。世界戦での緊張感漂う一枚一枚が、言葉以上に雄弁に男たちの青春を語る。「あの子は優しすぎるから、勝てないのね」というトレーナーの言葉が心に刺さる。少年院でカシアスの言葉に感銘を受けた若者が師弟関係を結ぶ後日譚も収録され、一つの言葉が人生を変える瞬間を目撃できる。ボクシングの枠を超えた、人と人との絆が静かに、しかし熱く伝わってくる一冊。

楽天で見る
絶賛14
好評4
普通4
不評0
酷評0

TOTAL 22 reviews

50夢ノ町本通り

夢ノ町本通り

2023年刊行

450pt

TOTAL SCORE

本を読むことと旅に出ることを、ほとんど同じ行為として捉えてきた著者による、30年以上にわたるブックエッセイ全36編を収録した一冊。「本を買う」「本を読む」「本を語る」「本を編む」「本を売る」という5つの章で構成され、三島由紀夫、モハメッド・アリ、山本周五郎など、未知の人物との文学的な遭遇が鮮やかに描かれる。読者からは「著者が裏切らない」と称され、そのストイシズムは本にまつわるエッセイでも一貫して貫かれている。さらに、後に代表作となる旅の物語の直前、26歳の時に書いた書店ルポが初収録されており、著者の美学の原点を垣間見られる貴重な一冊としても注目を集めている。

楽天で見る
絶賛12
好評15
普通24
不評4
酷評0

TOTAL 55 reviews

← 小説ランキング一覧へ